くまのＰさん（仮名）には
ハチミツでもあげときゃ満足でしょ。

（開いた両手を口に添えて可愛らしく）
アハハハッ！
（しかし邪笑）

・・・最早疑う余地などなかった。少なくとも紳士の話は私の見たディズニーワールドのいくつもの事実を、見事なまでに説明していた。

　紳：　その表情を見ると、どうやらようやく信用していただけたようですね。それではここで、もう一つ証拠をお見せしましょうか。

　私：　いえ、もう疑ってなんかいませんよ。ただただ驚くばかりで・・・

　紳：　お時間は取らせませんよ。ちょうど良いことにここはキャラクターショップですからね。

　もう、ＭＭ（♂）とＭＭ（♀）がどうやって支配していったか、それはご理解いただけたことでしょう。しかし、それでは無名のキャラクター達はとても生活などできません。何てったって、あの人気者のＤＤ（鳥）さんですら生活に不自由なさっておられると耳にするほどですから。

　中には当然のことかも知れませんが、アルバイトをするキャラクターもおりました。勿論、アルバイトができるくらいのキャラクターですから、無名どころか本当に名前もありません。アルバイトと言っても、ファミレスのレジの横に飾られているぬいぐるみみたいなもんです。

　しかし、それすらＭＭ（♂）は許しませんでした。世の中どこから人気に火がつくか分かりませんからね。一つでもそういう形でブレイクするキャラクターが出ることは、支配力に少なからぬ影響を与えかねないからです。

　私：　許さないって言っても、一体・・・

　紳：　あるとき、アルバイトのばれたキャラクターがいました。携帯のストラップのキャラクターとして使われているのを、運悪く見つかってしまったのです。どうもディズニー社は小さな仕事ですし、ＭＭ（♂）の耳に入れる必要もなかろうと考えていたようで、一応ディズニー社の引き受けた仕事ではあったようなのですが、自分の支配の及ばない形でキャラクターが売られていたこと自体、ＭＭ（♂）は気にいらなかったのです。

そこで、ＭＭ（♂）は会社にある提案を持ちかけました。

　私：　提案？

　紳：　ええ、その提案があなたの目の前にあるのです。お気づきになりませんか？　そこの棚をよく御覧なさい。

　紳士に言われて棚に目をやり、私は最初別に何も気にならなかったが、そこに並ぶ何の変哲もないクマのぬいぐるみの列にあるものを見つけたとき、私の脳裏にはナチスの恐怖支配が浮かんだほどだった。

私の見たもの。それは、

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　私はその場に立ち尽くしていた。紳士はそんな私の姿に満足したかのような表情を浮かべ、何も言わずにその場を去っていった。

　私は紳士の去っていく後姿をしばらく見守っていたが、紳士は辺りを見回しては時に怒りを、時に失望を表すようにグワッグワッと叫び、あるいは悪態をつきながらショップの人ごみに消え去っていった。

　そんな紳士の悪態の中で一つだけ私の耳に残った言葉．．．それは紳士が私に対してでなく、誰の耳にも聞こえるように発した言葉であり、紳士との「誓約」には含まれないはずの言葉であろう。

何でこの俺様が

　　　　　　　　　　あいつのドライバーなんだダググググワッ！！！

アイツを倒してディズニーの

人気No.1になるのは俺だー！

グワッ

グワッ

グワッ

グワッ

グワッ

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　長い間、紳士から聞いた信じられないような話にお付き合いいただいたが、紳士との誓約に従ってとにかく今回のこの話は他言してはならないことを最後に再び確認させていただきたい。

　また、そんなこんなで非常にミステリアスなディズニーワールドの日々であったが、私たちは勿論とても楽しく時間を過ごしたのである。アヒル好きの奥方がドナルドの帽子を買えなかったことが残念だった以外は。

　世にも恐ろしいこの裏話で皆さんのディズニーの夢を壊してしまうのは全く私の本意ではない。そこで最後に、そんな私たちの楽しかったディズニーワールドでのスナップ写真をお見せしよう。このとても楽しげなディズニーの写真で皆さんが世界中のディズニーランドへ行きたいと思っていただければ幸いである。