スコットランドの首都、エディンバラで開かれる国際学会に参加すべく、奥方同伴でアメリカからの空の旅と相成りました。勿論奥方はただの観光ですけど。
ルートは、地元の小さな空港−フィラデルフィア経由−マンチェスター経由−エディンバラ。
2001年の米国同時多発テロ以来、アメリカでの飛行機の手荷物チェックは大変厳しくなったので、大事なもの以外はほとんどチェックインして、手荷物は必要最小限にしておきました。アメリカはこの出発の数日前からすごい暑さで、私は半袖に短パン。身軽な格好に身軽な荷物です。
で、地元の空港でチェックインすると、マンチェスターでUS AirwaysからBritish
Airwaysに乗り換えるにも関わらず、荷物はそのままエディンバラに持っていってくれるということで、
これは楽チン
と喜んだ・・・はずだったのです。
まず、問題はフィラデルフィアで起こりました。ゲートに到着すると、そこは人、人、人。しばらくすると、隣のパリ行きのUS
Airwaysの客と合わせてゲート前は人でごった返し、椅子は満席なのに立ってる客で押し合い、へし合いという状態にまでなってしまったのです。
そこへアナウンス。
「ボランティアの方を募っております。 今晩のホテル代●●ドルをお出し致しますので、 便を変更して下さる方はいらっしゃいませんか?」
どうもオーバーブッキングのようです。その場でボランティアを募るのは初めて見ましたけど、とにかくそのせいで遅れているようでした。
で、結局立ったまま30分以上を満員のゲート前で過ごし、出発は1時間遅れ・・・。
実は、チケット購入時、マンチェスターの乗り換え時間がちょっと短いかなーと思ってたんですが、まぁ同じ空港でそんなに大きいわけじゃなさそうだし、よっぽど遅れない限り大丈夫だろうと踏んでたんですよね。
で、出発の遅れた時間から逆算するとかなりギリギリ。「こりゃぁまずいかなー」と思いつつも、マンチェスターからエディンバラまでは電車でも十分移動可能な距離ですし、何とかなるだろう・・・と思ったところが、
あれ? 荷物は???
と気づいたのです。
そう。荷物は一体どうなるんでしょう??? 既に運搬のリストには我々の荷物のコードが入っているはずですけど、荷物だけ積んで出発ということは爆弾の可能性もあるので安全対策上できません。しかし、我々の荷物はマンチェスターで下ろすことになってるわけじゃなし、全く何がどうなるのか見当もつかなくなってしまったのです。
果たして、マンチェスターに到着。次の出発の30分くらい前でした。まぁ急げば間に合わないこともない、って感じです。しかも飛行機は遅れたために本来のゲートに行くことができなかったため、滑走路を外れたところに止まってそこまでバスが迎えに来ており、機内アナウンスで、
「バスは2回に分けて乗りますが、 次の乗り継ぎの便がある方を最初のバスに優先して下さい。」
とのこと。これだけの手際なら大丈夫かも、と一瞬飛行機の中で期待は膨らんだのです。
我々の席は一番後ろの方だったので、降りるのは必然的に一番最後くらいでした。で、タラップを降りるとそこには満員のバス。でも、いわゆる通勤の満員に比べれば余裕はあるんで、これは乗るしかない、とバスに向かったところ、
係員(以下、係):「ちょっと待ってください。」
はぁ?
私:「次の乗り継ぎのある人は優先なんでしょ。」
係:「でも、いっぱいなので次に乗ってください。」
私:「(強い口調で)次じゃ間に合わないんですよ。まだ乗れるじゃないですか。」
係:「どこ行きですか?」
私:「エディンバラ行きです。」
すると、他の係員と何やらごちゃごちゃ話してたんですが、半ば無視して乗っちゃいました。
でも、乗っちまうと何も言わないし、
だったら最初っから止めるんじゃねぇよ!(▼O▼メ)
って感じです。
で、とにかくバスはターミナルの入り口へ。幸い一番最後に乗ったおかげで降りるのは一番最初。降りたところで階段を上がって1Fです、と言われて
地上から上がって1Fってどういう意味だよ???
と不思議に思いつつも言われた通りに階段を上るとそこは1F。もう勘のよい方はお気づきかと思いますが、イギリスは地上はGround
Floorで、いわゆる2Fから1Fが始まるんでした。それにしてもこの非常時に、
まぎらわしいんだよっ!
で、1Fへ上がると、そこは乗り換えのための場所のようです。ちょっと先には出口がありますが、これはマンチェスターで降りる人用。で、乗り換えのカウンターではインド人風の兄ちゃん(イギリスの空港職員には何故かインド人系がやたら多いと思いません?)がトランシーバ片手に急がしそうに働いてます。
しかし我々も非常事態。忙しそうにしてる兄ちゃんに、
私:「エディンバラ行きなんですが、どうすればいいですか?」
兄ちゃん(以下、兄):「数分したら連れてってあげるから、そこに座ってて。」
そう言われたら待つしかありません。というか、何の迷いもなく「連れてってあげる」の言葉とトランシーバによる緻密そうな情報交換を見ると、
ひょっとして勝算アリ?
と期待はさらに膨らみました。
そして待つこと5分ほど。飛行機の出発時刻は後15分ほどに迫ってます。するとようやく兄ちゃんが、
兄:「それでは連れて行くからついてきて。」
と言ってまたGround Floorに降りていきました。
バスには他の便の客も数名いました。
兄:「君達、どこの便?」
私:「British Airwaysで●●時●●分の便です。」
兄:「どこから来たの?」
私:「US Airwaysでフィラデルフィアからです。」
すると兄ちゃん、トランシーバで誰かとお話。空港の滑走路ですからうるさくて聞こえにくかったんですが、私の耳に一つだけはっきり聞き取れる単語がありました。
兄:"No chance?"(無理なの?)
おーい。ヾ( ̄o ̄;)
・・・バスはUターン。もと来た道を引き返しました。
兄:「申し訳ないけど(I'm
sorry)無理なので、ついてきて下さい。」
他の客をバスに残して兄ちゃんが我々をまた1Fに連れて上がりました。そして、
兄:「あそこのGentlemanが指示してくれるから。」
と言って兄ちゃんは去っていったのでした。
・・・ありがとう、兄ちゃん。でも結局ダメだったのね...(T-T)
まぁ何となく予想はしてたっていうか、我々も腹が据わってきたというか、そんな感じでそれほどショックではなかったんですが、心配なのは荷物。かと言って何ができるでもないので、とりあえず、Gentlemanにどうしたらいいか聞きました。すると、
「ここで入国手続きをして、ターミナル3に行き、あなた達が乗る予定だった British
Airwaysのチケットカウンターに行ってください。 そこで次の便に乗せてくれるから。」
とのこと。
結局気が付けば、同じ便のマンチェスターで降りる人は既に列に並んでて、我々は一番最後になっちまったんですが、まぁ急ぐ必要もないのでのんびりと入国手続きをし、言われた通りにターミナル3に移動したのでした。
場所は北イングランド最大の都市、マンチェスター。そして、この時期にしては異常な寒さの中を
とっても季節はずれな半袖短パンの日本人、森イチロー。
おまけに荷物は行方不明。
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運命や、如何に???
<中編へつづく>
A8.
とにかく自己主張は大事です。遠慮は即トラブルを招きます(バスの例参照)。自分がいけると判断できるくらいなら、相手が「絶対にダメ」と力ずくで止めにでもこない限りは、しっかり自己主張しましょう。
ひょっとすると5分座ってたあの時間が命取りだった可能性もあったのです。結局インド人の兄ちゃんは我々の便を最初の時点では理解していなかったわけで、あそこでもっと「時間がない。我々の便は・・・」と主張していれば、もしかすると結果は違っていたのかも知れません。 |