恐怖で支配するマフィアそのもの

　この言葉を耳にしたとき、私は「信じられない」という表情を浮かべたに違いない。そしてそのとき、目の前の紳士が何故か一瞬勝ち誇ったような顔をしたのは私の気のせいだったのだろうか．．．

　とにかく、私は言葉を失っていた。

　その間、恐らくほんの十数秒であったろうと思うのだが、もしかしたら１分以上経っていたかも知れない。そしてようやく私は口を開いた。

　私：　恐怖で支配って．．．いや、あなたを疑ってるわけじゃないんですが、そんな話簡単には信じられないというのが私の正直な気持ちです。

　紳：　あなたが信じられないのも無理はありません。この夢のような世界、ディズニーワールドに、恐怖支配なんておよそ似合いませんからねぇ。ですが、これは真実なのです。

　確かに、始まりはＤＤ（鳥）さんの人気に対するＭＭ（♂）の妬みでした。しかし、組織が大きくなるに連れて、そうやって支配することにより、ＭＭ（♂）は自分の人気を容易に維持し、またそれに伴って莫大な利益をも産むことに気づいたのです。

　私：　（あまりの話の大きさに、逆に力が抜けたように）はは、そこまで行くとまるで映画みたいですねぇ。

　紳：　これは現実なので．．．グワッグワッ！！！

　いや、取り乱しました。このお話はホントあなたにだけしかしていないのですが、信じられないのも無理はありません。ですが、ここにいくつかの証拠があります。まず、その最も顕著なものはあなたが最初にお気づきになった、ドナルドの帽子です。あれだけ人気のあったあの帽子が無くなったのは、実は単に特定のキャラクターの人気を落とすためだけはありません。

　キャラクターグッズの売上は、表向きには当然ウォルト・ディズニー社のものです。しかし、ここからのお金の流れが問題なのです。ディズニーのキャラクターとて生きていかねばなりません。そして生きていくためにはお金も必要です。皆さんはきっとあまりご存知ないと思うのですが、ディズニーのキャラクターはそれぞれがウォルト・ディズニー社と何らかの契約を交わしています。

　私：　タレントの契約のようなものですね。

　紳：　その通り。ですが、あれだけ多くのキャラクターが一人一人事細かに契約するわけでは勿論ありません。そこで、多くの特にそれほどのビッグネームでないキャラクターは、代理人を立てて契約します。代理人は数人のキャラクターをまとめてウォルト・ディズニー社と交渉し、その交渉によって得た契約金を元手として個別のキャラクターと契約を結ぶわけです。そして、残ったお金が代理人の懐に入る、というシステムなわけです。

　私：　なるほど、理に叶ったうまいシステムですねぇ。

　紳：　そう、初めは確かに大変うまく機能したシステムでした。代理人と言っても、大抵はキャラクターの作家がそれを兼ね、自分の創作したキャラクターを自分でウォルト・ディズニー社に売り込んでいたわけです。あなたもディズニーストアなどで有名なアーティストから無名なアーティストまで、いろんな作家がいるのはご存知ですよね。

しかし！（グワワワッ）

　問題はここからなのです。作家とて、本業は絵を描くこと。決して交渉ごとは得意な方ではありません。そこに目をつけたのが．．．

　私：　（待ちきれないように）ＭＭ（♂）だと．．．

　紳：　グヮーッ、グヮーグヮーグヮーグヮーッ！！！
               （怒りを露わに）

　私：　あ、すみません、すみません。お話を聞かせてください（懇願）。

　紳：　グヮッグヮッグヮッグワワワッ．．．（怒りを静めながら）全く、あなたも気が早い。いいですか。これは本当に極秘な話なのですから、そう気安く話の腰を折ってもらっては困るのです。

　話を繰り返しましょう。作家とて、本業は絵を描くこと。決して交渉ごとは得意な方ではありません。そこに目をつけたのが．．．（チラリと私の方を見て）

情婦のＭＭ（♀）だったのです。

　私：　（言葉に詰まっている。）

　紳：　（やや得意げに）話はあなたが考えるほど単純なものではない、ということです。

　ご存知ないかも知れませんが、情婦のＭＭ（♀）と言えば、派手な衣装は有名です。いつもリボンに目が行きがちでしょうが、実はその衣装の種類たるやすごい数です。しかも、その派手な買いっぷりは、並みの金持ちなら簡単に破産させてしまうほどだと言いますから。

　私：　（独り言で）林家パー子かと思ったら、叶姉妹だったってわけね。

　紳：　何か仰いましたか？　まぁいいでしょう。確かに情婦のＭＭ（♀）はいいところに目をつけました。契約を押さえさえすれば、事実上全てを押さえたようなものです。そこで、情婦のＭＭ（♀）はＭＭ（♂）にお願い、と言っても金の切れ目が縁の切れ目とばかりに半ば強制的に命じて、自分の組織、ここからはファミリーと呼ばせてもらいますが、

ファミリーに所属すれば
ＭＭ（♂）の出る映画やアトラクションに
端役で使ってやる

と持ちかけさせ、小さなキャラクターから徐々に取り込んでいったのです。

　そして、組織に所属しないものは絶対にＭＭ（♂）とは競演できないようにし、さらにはＭＭ（♂）とだけでなく、ファミリーのメンバーであるペットの犬のＰや友達の犬のＧとすら競演できないようにしました。これは最早、キャラクターにとっては死活問題です。何故ならそれらと競演できないってことは、ディズニーから閉め出されたも同じ．．．いや勿論心優しいＤＤ（鳥）さんはそんなキャラクター達を救ってあげていたようですが、それにも限界がありますからね。一人、また一人とファミリーに所属せざるを得なくなっていったわけです。

　私：　それはあまりに酷い．．．

　紳：　それだけではありません。ファミリーに一旦所属したが最後、確かに仕事はもらえます。しかし、契約のシステムからすれば、ウォルト・ディズニー社からのお金は代理人、すなわちＭＭ（♂）に入るわけです。そしてＭＭ（♂）はその上前をピンハネするとう仕組みなわけです。小さなキャラクターにしてみれば、ファミリーに所属しなければそもそも生きていくことすら出来ないわけですから、そんな状態でもファミリーから抜け出すことはできません。そんなこんなで、

事実上、
情婦ＭＭ（♀）を頂点とする
マフィア・ファミリー

が出来上がったというわけなのです。

＜Part. 4に続く＞